鍼灸一筋の独り言

産後の体調不良と東洋医学的な視点

【東洋医学】産後の体調不良のお話

【記事投稿日】令和7年6月17

【筆者】岡田匡史(鍼灸師)

 

出産後、多くの女性が体調の変化を経験します。

 

のぼせ、動悸、めまい、頭痛、息苦しさ、喉の詰まり、不眠、精神的な不安など、多様な症状が現れることがあります。

 

西洋医学では、これは主に産後のホルモンバランスの乱れや自律神経の不調によるものと説明されます。

 

しかし、東洋医学の視点から見ると、これらの症状には「腎」と「心」のバランスが深く関係していることが分かります。

 

東洋医学の腹診による診察では、産後の体調不良を抱える多くの方に共通して見られる特徴があります。

 

それは、下腹部(腎の領域)が軟弱になり、みぞおち(心の領域)が緊張して硬くなっているという状態です。

 

また、個人差がありますが、みぞおちを指腹で押すと『痛みを感じたり』『気持ち悪かったり』『動脈の拍動』に触れる事もあります。

 

この変化がどのように体に影響を与えるのかを紐解いていきましょう。

 

 

 

腎と心の関係ー体の中の『水』と『火』

東洋医学では、腎は「水」、心は「火」に例えられます。

 

健康な状態では、腎の「水」の力が心の「火」を適度に抑え、体のバランスを維持します。

 

しかし、産後は腎が弱りやすくなるため、心の火をコントロールできなくなり、火が過剰になることでさまざまな不調が現れます。

 

例えば、火が盛んになりすぎると、以下のような症状を引き起こします

  • のぼせ・頭痛・めまい → 熱が上部に昇りやすくなる
  • 喉の詰まり → 気の上昇により、喉の違和感につながる
  • 動悸 → 心の働きが過剰になり、鼓動を強く感じる
  • 精神的不安・不眠 → 心(火)が高まることで、気持ちが落ち着かなくなる

 

また、「火が強くなりすぎると、肺(金)が弱まる」という関係性も重要です。

東洋医学では、「火は金属を溶かす関係」から、心の火が強くなると肺(金)の働きが弱まると考えられています。

 

この影響で、

  • 息苦しい → 肺の力が弱まり、呼吸がしづらくなる。
  • 皮膚トラブル → 肺は皮膚とも関係しているため。乾燥や肌荒れなど
対策ー腎を補い、体のバランスを整える

このような状態を改善するためには、「腎の力を回復させること」が重要になります。

 

腎を補うことで、心の火を適度に抑え、体全体のバランスを整えることができます。そのために効果的なのが、食事療法と『鍼灸治療』です。

 

★食事で腎を補う
腎を養う食材には、以下のようなものがあります

  • 黒豆 → 腎を強める代表的な食品。黒い食材は腎を強くする
  • ヤマイモ → 消化を助けながら腎の気を補い、疲れを回復させる
  • クコの実 → 精神を安定させ、腎の働きを活性化

★鍼灸で腎を整える
鍼灸治療では、腎を補う施術を行い、体の深い部分から回復を促します。

 

特に、「腎兪」「照海」「復溜」「関元」などのツボを使うことで、腎を活性化させることができます。

産後の体調不良は個人差があり、症状の現れ方もさまざまです。

 

しかし、東洋医学の視点を活用することで、自分の体の状態をより深く理解し、適切なケアを行うことができます。

 

腎を補う食事や鍼灸治療を取り入れ、無理をせず少しずつ体調を整えていくことが大切です。

 

今回は、腎と心の関係を中心にお伝えしましたが、産後は血虚になるので血虚による不調も考えられます。

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